SALMON in 北海道 2005

まえがき
NZから帰ってきてからというもの気分が優れない。何故かなんて問いただす必要もないくらいに明白。NZで釣れなかったからに他ない。

雑誌を見ていたら北海道で調査目的での鮭釣りの知らせが載っていた。数カ所の河川で行われるとのこと。申し込み期日を見たらあと半月で締め切り。 行くしかない!早速、忠類川に決める。インターネットで調べて状況を見る。何の事やら分からない。タックルは?フライは?宿は?・・・・

冷静になって、インターネットでよく調べると忠類川より茶路川の方が参加されている人数が少ないことを発見。人が少ない方が釣れる確率は高いと判断して急きょ茶路川に変更。

NZから帰ってきたばかりなので予算を抑える必要がある。それより女房にどう切り出すかが最大の難関。頭が痛い。

航空運賃、宿、レンタカーなど色々必要なものを調べる。思ったより高い。時間がない。面倒くさくなったので農協に頼むことにする。安いパッケージを見つけた。これならいけると思い問い合わせると2名様からとのこと。愕然とする。

どうせ行くならよく釣れている期間に行きたい。9月初旬から中旬にかけてがベストだと分かったのでとりあえず費用の面は後回しにして飛行機の往復と宿が取れすかを農協に問い合わせる がダメ。

逆に何時ならOKかを問い合わせると10月の中旬。キャンセル待ちで10月の初旬。キャンセル待ちにかけるしかない。期間は3泊4日。8万数千円なり。

なんとか女房を説得して許可らしきものをもらう。さて、後はタックルとフライだ。鮭釣りのビデオを5本購入して何度も見る。タックルとフライは分かった。フライは主に1/0をメインに数十個作る。インターネットで見つけた簡単なフライをとりあえず#8〜#4に各10個づつ。タックルはダブルハンド。ちょうど持っているバンブーロッドを持って行くことに。ちょっとインターネットの情報が気になったので#8パワーハウスも持って行くことに。

 

10月4日(火)
釧路空港に着くと早速レンタカーを借りて茶路川の下見に。この日は、休止日。茶路川に到着すると愕然。思ったより遙かに川が小さい。ダブルハンドなんて全然必要ない。まるで家の近くの可児川と同じくらいだ。

サケがいないかというより大きな魚はいないかを探す。私の頭の中ではサケはデカイものだと思っているからだ。全く見えない。全くだ。それに浅すぎる。この程度の川をサケが上る?川幅数m!!

何をしに来たんだろう。どうしよう。頭の中が白くなっていく・・・・・そうだ、漁協へ行って情報をもらうことを思いつく。カーナビを頼りに漁協へ。

漁協で見てきたことを言うとサケはいるから心配ないとのこと。本当かな?川幅は広いが水が流れている部分は狭くて浅いことを話すと夏に来た大型台風で川が埋まってしまったとのこと。台風までは良かったと。

フライでのポイントとタックル、フライについて訪ねるとフライとタックルは高校生のK君に聞くと良いと教えられた。K君って?釣りをしていれば分かるとのことプロ級に上手だそうだ。

漁協の方たちは本当に親切で嬉しかった。ありがとうございました。

教えてもらったポイントを確認するために再度、茶路川へ。当日は、人が多いだろうから車を止める所と入川場所を決めておく。

やるべき事はやったので宿へ。宿は、釧路市内にあるホテル。車で40分くらいかかる。車中から景色をみるも何もない、本当に何もない所だ。ホテルにチェックインして夕食をと思い釧路駅方面に歩く。食べ物屋がない。というよりつぶれて店が閉まっていることが多いのに驚 いた。不況!?他人事でないので背筋が寒くなった。

ついに釧路駅に着いてしまった。普通これ位の大きな町であれば駅前は繁盛していても良いものなのだが一体ここは・・・・

仕方なしにホテルで食べることに。

 

10月5日(水)
茶路川に朝5時ちょっと過ぎに到着。思ったより人は少ない。10月は、午前5時30分〜午後4時30分までが釣りの出来る時間だ。早速手続きをして釣り場へ。先に誰か入っていないことを願いながら車を飛ばす。

誰もいない。ホッ!

早速、ダブルハンドロッドをセットして川へ。何故ダブルハンドロッドを選んだかというとデカイのが釣れたら取り込めないと思ったからである。 見たビデオでも白鮭は川のライオンとのまたっていた。

目を凝らして水中を見るが何もいない。浅すぎる。アメマス?オショロコマ?の小さいのはいるがデカイのはいない。40cm位のはいるがこれがサケだとはとうてい思えない。

ポイントを探しながら下る。ついに橋が見えてきた。竿を振ったのは入川した箇所と橋の近くだけ。これでは何をしに来たんだろう。川が浅すぎる。本当に浅い!!

仕方がないので橋の近辺で粘る。フライは底の流木などにとられてどんどん無くなる。これには参った。漁協の方の話だと川にせり出している木の中だとか障害物の中にいるとのこと。どうやって釣ったらよいのか見当が付かない。それにしても本当にいるの?

9時半頃、半分あきらめかけている所へ一人のフライマンが。すかさず話しかけて情報をもらうことに。分かった事は、サケは、10時位からでないと動き出さないため釣れない。地元のフライマンは10時位になるとこの辺に集まってくるとのこと。ガク〜〜ン!!

何やっとったんだ俺は。これからって事ね。俄然やる気を出して再開!

しかし、新参者で釣れるような魚では無い様だ。しつこくしつこ 攻めても何もない。何んにもない。本当にサケはいるの?先ほどのフライマンに訪ねると「ほらそこに見えるでしょ?」だって。見えません!!

少しずつ移動しながらやるも沈黙のみ。何が悪いんだろう。分からん!!

10時過ぎに一人のフライマンが現れて私がしつこく荒らし回った所から釣り始めている。そこダメよ。

彼の様子を一服しながら見ることに。キャスティングはめちゃくちゃ上手い。的確にしかもフライが無くならない。凄腕!

アッ!ロッドが曲がった。でっかい魚がドッタンバッタン暴れている。強引に陸に引き上げた。何で?何で釣れるの?参った〜ッ!ちゃんといるってことね。しばらくすると同じところでもう一本上げた。凄い!!アッ、彼かK君は!!

すがる思いで彼に駆け寄った。K君だった。漁協の方からK君のことを聞いたこととアドバイスしてもらえないかを尋ねると快諾。図々しくも色々尋ねる。

フライは?
私が使っているのは大きすぎるとのこと。親切にもフライを2個くれた。 通常#6。#4も使うとのこと。使っているフライを見せてもらうとテールがピンクのラビットファーでボディーがピンク。ハックルが白のウイリーマラブーの様な感じ。そうそうお尻に目玉が着いている。

ロッドは?
#8か#9のシングルハンド。ダブルハンドも使うがシングルで十分とのこと。

ラインは?
2mのみ沈むシンクティップにする。ちなみに私は4m以上を使っていた。そして、1本底にとられて無くしてしまった。

リーダーとティペットは?
4号〜5号のフロロを1.5m〜2mのみ。ラインに直付け。

ガーン!!釣り場でラインを短くするための道具がない。参った!上流に行った彼を見ているとまたもや釣り上げている。彼は人間か?神の化身としか思えない。彼が釣っている場所は散々私が攻めた後だというのに。

気を取り直して釣り始める。よく見ると流木の陰や木々が覆い被さった中にサケが一杯いる。いんるだー!しかし釣れない。時間前だが潔く今日はあきらめることに。ホテルに帰って明日の準備をしよう。

車に戻ると若い夫婦がいたので声を掛ける。1本上げたそうだ。悔しいが仕方ない。色々情報をもらう。図々しくアメマスの釣り方も教えてもらった。そして釣れるフライまでいただいた。 (図々しくてスミマセン!)

余談だが釧路で食べるところがない事を言うとこれから連れて行ってくれるという。さすがに申し訳ないので辞退したが何と親切なんだろう。K君や漁協の人たちもそうだ。人間が素晴らしい!!自分もこうなるよう努めないと。

帰りに偶然K君に会ったので朝のお礼を言うと釣れる場所を細かく教えてくれた。しかもどの位置にフライを流したら良いかもだ。ちなみに彼は、バッグリミットの5本きっちり釣っていた。 凄すぎる。

ホテルに帰り明日のためにラインシステムを作る。その後、教えてもらった地区に夕食に出かけた。行くとお店が一杯。あるところにはあるもんだ。全然分からないのでエイ ッヤーッで居酒屋風の店に飛び込む。

そこである営業マンと出会い意気投合して、その彼が別の店に連れて行ってくれた。そこは本当に小さく初めての人は絶対に行かない、入らない店である。少しずつ色々食べさせてもらったが素晴らしくおいしい。翌日来ることを約束して店を出た。 ちなみにこの時の飲食代は、おごってくれた。(図々しくてスミマセン!)

 

10月6日(木)
10時くらいに行けばいいのだが他の人に場所を取れないように早めに行く。まだ誰もいなかったので下流からK君が 教えてくれたポイントまでを丹念に攻めることに。順に攻めていくがフライを無くすだけだった。だんだん手持ちが無くなってきたのどうしようかと思いながら釣りをしていると夫婦連れがK君 の言っていたポイントに入ってしまった。

しまった!!そのポイントは2人で一杯の場所だ。仕方がないので彼らが移動するまで待つしかない。

1時間後、彼らが移動したのですかさずそのポイントに入る。K君が教えてくれたことを思い出しながらやるが分からない。アタリがあるのかないのか。ピックアップしようとしたら何かにふれたと思った 。突然、目の前でデカイサケがジャンプ。凄い!!

夫婦連れはどこかへ行ってしまって見渡す限り私一人。ゆっくりやることに。ホテルでもらった朝食を昼に食べて戦闘開始。

K君に教えてもらった事をああでもないこうでもないと考えながら やる。何かよく分からない。ピックアップしようとしたらピックアップ出来ない!!ンン?ラインが水面に突き刺さったまま移動するだけ。手には何やら重いものが掛かったっていう感触だけ。 サケ?サケだ!!やったー!!

バラさない様にしないと。今までに経験のない感触。ダーッと走らないだけラッキー。とにかくこらえるだけ。ロッドはかなり曲がっている。キャッチする場所を探す。そちらへ何度も誘導するが分かっているのか中々寄らない。どの位過ぎたのか分からない。腕が疲れたのと腰が痛くなってきた。

やっとの事で魚を確認できるところまで上げてきた。デカッ!!サケだ!!魚はまた潜る。浮いたと思ったらまた潜る。持久戦だ。お腹が横に なったらすかさず注意深く引き寄せる。しかしすぐ潜る。何度かこれを繰り返してやっと陸に引きずり上げた。白鮭の雄だ。フライをがっしりくわえていた。それにしても凄い牙。

感謝!感激!もう何も言うことはない。時間は1時ちょっと過ぎ。この1本で満足。もう帰っても良いと考えたがせっかくなのでもうちょっとやることに。

しばらくやっているとまた釣れた。 釣れるやん。今度は雌だ。サイズは同じ位。釣れる。この感触を体に覚えさせないと。再度チャレンジ。

ん?!また釣れた。しかし、今までのとは感触が全然違う。重い!何?!ラインが止まらない。初めて余ったラインをリールに巻く。ドラッグの調整をする。ラインが出るばかり。何だこりゃ。 スレ?

ロッドはグリップから曲がって限界かも。ラインは巻けない。4号のティペットが切れるかも。2本釣ったから切れてもいいやと脳裏を横切る。

あ〜ッ寄らない。急に走る。体が持って行かれそうになる。腰がギクッとなる。ヤバッまたぎっくり腰になったらここから帰れなくなる。ラインが水中に刺さった様な状態が続く。参った!泣きが入る。

あ〜疲れた。いい加減寄ってこんかい!手が疲れてロッドを持ってられない。抱きかかえる状態で一か八か移動する。少しずつ少しずつ。どれ位たったのだろう。やっと姿を見せたのは ・・・何い?!!モンスター?!。デカイという認識の範囲を遙かに超えている。

しっぽをくねくねと動かしただけでラインが一気に出て行く。もう分かった。最後まで付き合うよ。観念しました。体を反らしてはラインを巻く。ラインが出ていく。ラインを巻く。永遠かと思うことを繰り返した気がする。

寄ってきた。ついに寄ってきた。陸に引きずり上げようにも重すぎて上がらない。仕方がないのでラインをゆるめない様にして片手で一気にすくい上げた。バッタンバッタンして逃げようとするので両足で防ぐ。ロッドを放り投げて両手ですくい上げ 、やっと陸に上げた。逃がさない様に更に遠くに移す。

フーッ。終わった。一気に力が抜けた。河原に腰を下ろしてドッタンバッタンしている彼を眺めた。ズーッと眺めていた。 デカイ!先ほどのより1回りいや2回り大きい。デッカーッ!

かすかに動く口からフライを外し、もう十分。止めようと思ったがせっかくのチャンスを逃さない様に時間いっぱいまでやってみることにした。

繰り返し繰り返しフライを送り込む。突然ゴンと衝撃が手元に伝わってきた。すかさずあわせた。同様の感触がラインを通して伝わってくる。無事にキャッチ。初めてアタリが分かった。こいつ以外は、ピックアップしようとしたら釣れていたって感じ。アタリをとるのは難しい。

K君が言ってた。「アタリは、ライン先に微妙に出る」とか「手に伝わってくる」。手に伝わってくるのは誰でもわかるがライン先の微妙な変化は、長年やっている私でも分からなかった。もしかすると何匹ものサケが私のフライをくわえては吐き出していたのかもしれない。難しい!!

合計4本でタイムアップ。ふと気付く。河原に転がっているサケをどうやって車まで持って行ったらいいのか。1匹が約70cm。重さが約4Kg。これらが3本。合計約12Kg。そんでもってあの モンスターは約90cm。約7kg。全部で約20kgなり!!

持ってきたゴミ袋に何とか詰め込むが袋が伸びて破れて・・・・考えていなかった!!時間が迫ってきている。幸いに車は下流に止めておいたのでゴミ袋を縛って流れに放り込み下流まで流して事なき得た。後は、川から車まで持てるだけもって往復する。疲れた。

管理棟に着くと漁協で色々情報を下さった方がいらっしゃった。私の釣果に大変喜んでくれて私も嬉しかった。モンスターを手に写真を撮ってもらった。その写真は、漁協のホームページ に載せてもらっている。ありがとうございました。ちなみにモンスターのサイズは、体長91cm、体重7.3kg。茶路川歴代の10本の指に入るそうです。嬉しい!!

このモンスターは、剥製となりその雄姿を誇っています。

 

10月7日(金)
今日は、もう帰らなければならない。昼まで釣りをして帰ることにした。昨日の余韻も覚めやらぬ状態で同じポイントに入る。昨日と同じようにやっているつもりだがそれはそれ、相手は生き物であるからして昨日と同じ様にはいかない。

この日は、釣れなかったが幸福感一杯で釧路を後にした。

 

あとがき
今回の釣行は、実りの多いものだった。特に以下のものを上げたい。

・出会った方々はとても親切で頭が下がる思いだった。私もこうならないといけないとつくづく思った。
漁協の方々、K君、釣り場で出会った高野さんご夫婦、意気投合した営業マンの方、飲み屋のおかみ、食道楽のおやじ。大変お世話になりました。ありがとうございました。

・初めてサケ釣りに来て全てのことが勉強になり学習した。次年度も必ず茶路川へ行く。はっきり言うとドプリはまってしまった。サケ釣りは凄く難しいが面白い。K君の様になれたらさぞかし素晴らしいことだろう。K君の様になりたい!!

・自宅の近くに剥製にして下さる方がいたことに驚いた。この方は、とても紳士で新たな友人が出来たことに感謝している。

 

最後に、フィッシュイーターである私が白鮭が美味しいかどうかを活字で表現してみたい。

実は、出発前にある方から「川に上がったサケはまずくて食べられないかもよ。」って聞いていたから釣れたらどうの様に始末したらよいか悩んでいた。そうしたら漁協の方が「美味しいよ」って言われたので、私としては?状態だった。

また、比較のためにと思い海で捕れた白鮭2本(雄雌)を購入した。食べ方は、塩鮭にして焼く。アラを入れたみそ仕立ての鍋。

結論から先に言おう。非常に美味い!!マーケットで売っているサケはもう食べられない。今回のは、くさみも何もなくとても美味しい。

では、川組と海組の比較。海組は油っぽいって言うか若い人たちだったらこちらに軍配が上がるだろうけど50過ぎのじい様は、川組の勝ちとする。
尚、イクラの勝負も川組の勝ち。これは、若い人たちでもそうすると思う。海で捕れたサケのイクラは小粒で油っぽく、まだまだ未成熟な感じがする。まずいわけではないがとてもオイリー。川組のイクラは、はち切れんばかりのプリプリ感で食べても非常に美味しく正直、イクラを見直した。以前は、イクラは魚の餌としか思っていなかったし寿司屋でも滅多に食べなかった。食べても全然美味しくない!!

雄雌のどちらが美味しいか?はっきり言って雄です。雌より身が厚く味が良い。食べ比べれば分かるんじゃないかな?

さあ、ここで恐ろしい結論が導き出されたことにお気付きだろうか。市場に出回っているサケは、海で捕れたもの。しかし、川に上がったサケほど美味しくない。美味しいサケを食べたいと思うんだったら川で釣るしかない!! って事になるよね。

何が言いたいか。老い先短い者にとって美味しいものを出来るだけ沢山食べたい。魚好きの私にとってサケは大好物となった。サケは、漁協から買うことが出来る。しかし、より美味しいサケが存在する事実を知ってしまった以上は、その美味しいサケを食べたいに決まっている。 ってことは、釣らないといけないことになってしまう。

ああ、美味しいサケを食べたいがためだけに毎年、サケ釣りに行かなければならないということに気が付いてしまった。毎年行くしかないか?!許してくれるかな〜おかーちゃん!

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